概要
ユーロフィンジェネティックラボの蛍光多重免疫染色は、染色・撮影・解析までのトータルソリューションサービスです。国内唯一の ” 完結型受託サービス ” を開始しました。
蛍光多重免疫染色に関連する研究領域
腫瘍微小環境(TME:Tumor Microenvironment)とは
がんは、がん細胞だけではなく、免疫細胞・線維芽細胞・血管内皮細胞・リンパ管等、様々細胞や基質で構成されており、これらは腫瘍微小環境(TME:Tumor Microenvironment)とよばれています。
近年の様々な研究において、がん細胞とその周囲組織から作られる微小環境が浸潤や転移に大きく影響していることがわかってきました。
また、腫瘍細胞を免疫細胞の攻撃から守ったり、増殖や転移をサポートする一方、腫瘍を正常化させようとする働きもあることが報告されています。
このような背景から、がん免疫の研究では、腫瘍微小環境内の免疫細胞のサブセットやがん細胞を分類することが必要になるため、複数の標的を同時に可視化できるという実験の特性が非常に重要になります。
がん細胞を取り囲むがん微小環境の種類(*)
CTL(細胞傷害性T細胞) | 周皮細胞 |
Treg(制御性T細胞) | 血小板 |
樹状細胞 | 好酸球 |
MDSC(骨髄由来抑制細胞) | 顆粒球 |
腫瘍細胞 | 肥満細胞 |
NK細胞 | B細胞 |
線維芽細胞 | マクロファージ |
* https://diagnostics.roche.com/jp/ja/article-listing/the-tumor-microenvironment.html
がん微小環境の形成機構を明らかにすることにより、新しいがん診断法や抗がん剤等の治療法の開発など、大きく期待できます。
抗体薬物複合体(Antibody-drug conjugate: ADC) とは
抗体薬物複合体(Antibody-drug conjugate: ADC)は、抗体に抗がん剤を結合させたものです。ADCは、抗体が標的蛋白に結合し、がん細胞で薬を放出するため、がん細胞への効果的な攻撃、かつ正常細胞への影響を避けることが期待され、免疫チェックポイント阻害剤に並ぶ次世代のがん治療薬として、がん薬物治療の主流になると期待されています。
蛍光多重免疫染色でできること
蛍光多重免疫染色:腫瘍微小環境(TME)を確認できる方法
免疫染色は酵素標識抗体を用いる方法 (例. ペルオキシダーゼ標識抗体とDAB)と蛍光標識抗体を用いる方法がありますが、酵素標識法は、蛍光標識法と比較して非特異反応も多く、多重染色に向かないといったデメリットがあります。
そのため、がんの微小環境を詳細に可視化する方法(イメージングする方法)として、蛍光多重免疫染色のニーズが高まっています。
蛍光多重免疫染色は、1枚のスライドで同時に多数のマーカーを視覚化でき、各々の発現量もわかるため大変便利です。
蛍光免疫を繰り返す手法(抗原賦活化・染色・ブロッキング)ですが、各抗体の濃度調整・時間など手間や時間がかかり、染色後は、撮影・解析などの工程も必要になります。ユーロフィンジェネティックラボ社では、染色・撮影・解析までの全工程をご提供します。
組織の位置情報を保持しながら解析する方法として、空間トランスクリプトーム解析もあります。
空間オミクスでスクリーニング(RNA)し、絞り込んだターゲット(タンパク質)で蛍光多重免疫染色を行い、その後画像解析まで行うサービスもご提供しています。
ユーロフィンジェネティックラボでは、がん微小環境の形成構築の一助になるべく、蛍光多重免疫染色・撮影・解析のサービスをご提供します。
ADCの効果・副作用の確認
がん細胞及び腫瘍微小環境(TME)において、ADCの標的蛋白がどこにどの程度発現しているか、その効果や副作用はどうなっているか等、関連するバイオマーカーを同定することを目的に、蛍光多重免疫染色を活用することができます。
ユーロフィンジェネティックラボ社ではお客様ご指定の抗体でも解析は可能ですが、肺癌パネルとして2つのセットもご用意しています。
サービスの流れ
STEP 1 染色
組織切片の蛍光多重免疫染色(明視野事前条件検討含む):手間と時間のかかる新規抗体の条件検討を含めた染色サービスを提供します。
- Akoya Biosciences 社の Opal 多重免疫染色システムを用いた最大 7 種類のターゲットの多重染色(今後他社システムでの染色も導入予定)(fig.1)(fig.2)
- 明視野単染色の条件検討から蛍光多重染色の最適プロトコルの構築が可能
STEP 2 撮影
PhenoImagerでの撮影:蛍光スペクトルを分離できるため、近い波長同士の染色でも識別が可能です。(
fig.3)
- Whole slide image の撮影が可能
- 同一切片で最大 7 種類のターゲットを蛍光検出可能なため、組織内での異なるターゲットの局在を確認できる(fig.4)
- 微視的な細胞間の相互作用から、巨視的な組織構造の解析までスケーラブルな研究デザインに柔軟に対応
STEP 3 解析
HALOを用いた画像解析:客観性と再現性に優れた画像解析データを提供します。(
fig.5)(
fig.6)
- 対象領域中の染色強度、面積、陽性細胞数などの算出が可能
- 学習機能により免疫染色の解析対象領域中の不要な領域(間質など)を除外
【本サービスの有用性】
- 炎症領域の面積算出
- 定量解析
- 癌組織における局在性の診断マーカー
- 毒性試験
- 陽性率のスコアリング
- 免疫活性と抑制に関するリガンドと関連レセプターの確認
- 腫瘍・間質・湿潤の細胞型の確認
- 各細胞のカウントおよび空間解析
染色セット
随時更新がございますので、
ユーロフィンジェネティックラボ社サイトにてご確認いただけます。