概要
コスモ・バイオ社では、細胞の代謝活性測定のファーストステップとして、各種細胞を培養し、お手持ちの物質を添加した場合の細胞内のATP量を測定する受託試験を実施しています。
ATPは、細菌類から多細胞生物にいたるまで共通のエネルギーとして、真核生物では細胞内小器官のミトコンドリアで主に生成され、細胞の運動・細胞内輸送・化学反応などの多くの代謝反応に利用されています。通常の状態では、心臓などの常時大量にATPを必要とするような細胞を除いて、細胞内のATP量は様々なフィードバック調節により一定に保たれており、大きく変動することはありません。
しかし、上記の図のように低酸素・低栄養、アルデヒドや老化などの様々な外的要因により、ATP産生量は低下することがあります。 本サービスではATP産生量を低下させる条件として低血清培養を用い、(ルシフェラーゼ発光法によるATP量測定により)細胞のATP産生低下に及ぼす被験物質の影響を検討します。
試験概要
低血清培養により、低下したATP産生量を被験物質がどのくらい回復させられるかを検証する試験になります。
*細胞種・提供元・ロット等により、細胞の低血清への反応が異なるため、至適条件を決定するための予備試験は必須です(下図の例を参照ください)。
予備試験:各種細胞における通常血清と低血清下でのATP産生量の確認
【試験プロトコル】*参考例
- ヒト正常細胞の例としてヒト線維芽細胞、上皮系ガン細胞の例としてHeLa、マクロファージ系のガン細胞の例としてRaw264.7を用いた。
- 各種細胞を96ウェルプレートに10,000cells well(N=3)で播種した。
- 播種翌日、培地を除去し、低血清(血清濃度1%)と通常血清(血清濃度10%)の2パターンになるように培地を新たに添加した。
- 培地添加後、24、48及び72時間後に細胞内のATP量を測定した。
血清濃度の違いによる各細胞のATP量の変化(fig.2~fig.4)
上皮系ガン細胞であるHeLaは24時間の時点でも、通常血清と低血清で大きな差が認められており、72時間では差が少なくなる傾向にあった(
fig.2)。 一方、マクロファージ系のRaw264.7では、24~72時間のいずれにおいても差は大きくなく、時間経過による差の変動も少ない結果となった(
fig.3)。 ヒト正常細胞であるヒト線維芽細胞では、24時間では差が小さかったものの、48~72時間で差が大きくなる傾向が認められた(
fig.4)。 よって、HeLaでは24時間、Raw264.7では24時間、ヒト線維芽細胞では48 or 72時間の培養時間が検討に最適な条件であるということが明らかとなった。